ジルの独白

それはありきたりの九月だった
人々に立ち向かう勇気さえれば…
ラクーンシティはアンブレラのものだ
この街で逆らおうとする者はいない
それが破滅への選択なのに
愚かさのつけを払うことになるだろう
許しを乞うにはすべてが遅すぎる
運命が流れはじめた時
それをとどめることはできないだろう
誰にも…
最後の九月が過ぎ去ろうとしている
それを理解しているのは私だけだ…

プロローグ

初秋。
森から降りる青い薫風が土の香りをはらむ山吹の涼風に変わる。
幾度となく自然が繰り返してきた季節の移り変わり。
事件から1ヶ月半あまり……
アメリカ中西部に位置する小さな工業都市ラクーンシティも9月を迎え、人々は日々のいとなみの中にその記憶を埋没させていった。

アークレイ山地で起きた怪異な猟奇事件。投入されたS.T.A.R.S.の壊滅。
洋館に隠されたアンブレラの生体兵器研究施設と、私設を汚染し人や動物をおぞましい怪物に変貌させる悪魔のウィルス「T」の威力。
人々は生還者たちの言葉を信じることができなかった。彼らがそこで体験した恐怖、数々の生体兵器や生ける屍の存在などという話は想像を絶したからだ。
生還者たちは人々の理解を待たず、巨悪を暴くために欧州へと旅立った。

そして、それを境にしてラクーンシティの異変は始まる。
市街では異常殺人が頻発し、奇病が流行しだしたのである。
Tウィルスの流入……
目に映らない悪魔は静かに忍び寄り、そして人間を怪物へと変貌させる。
人々は己の愚かさを呪った。しかし選択はすでになされた。
未来はすでに彼らの手からこぼれてしまったのである。
ラクーンシティは崩壊の時を迎えていた。

時系列

1998年5月11日
ラクーンシティ郊外の洋館で、バイオハザードが発生。
1998年7月24日
S.T.A.R.S.ブラヴォーチームのヘリコプターが、アークレイ山地で消息を絶つ。
[BH1] 調査のためS.T.A.R.S.アルファチームが投入される。
1998年7月25日
クリス、ジル、バリー、レベッカ、ブラッドの5人はラクーンシティ郊外の洋館を脱出。
1998年8月8日
クリスが洋館事件の詳細を報告するも、署長は相手にせず。
1998年8月中旬
おかしな事件が多発。街のあちこちで、化け物を見たとの証言が相次ぐ。
クリスが連邦警察局に調査を依頼。
1998年8月24日
クリス、ジル、バリーの3人がG-ウィルスの情報をつかむ。
さらに詳しい調査を行うため、ヨーロッパに飛ぶことを決める。
1998年9月中旬
G-ウィルスを奪取するため、アンブレラの幹部がスパイ数名を送り込む。
1998年9月23日
大量のT-ウィルスが流出、ラクーンシティの惨劇が始まる。
1998年9月26日
ゾンビの集団がラクーン警察署を襲撃。
1998年9月28日
[BH3] ひとり密かに市内に残っていたジルはカルロスと出会う。
1998年9月29日
[BH2] レオンがラクーン市警に着任。クレアがラクーンシティに到着。
1998年9月30日
レオン、クレア、シェリーの3人はラクーンシティを脱出。エイダは行方不明。