ストーリー

~サムス・アランの手記より

SR388。かつてメトロイドの巣窟であった魔の惑星。
ヒエラルキーの頂点を失った、この星の生物達は、数年という時の流れを経た今、本来あるべき力関係を取り戻しつつあるようだ。

バイオテクノロジー会社「BIOLOGIC 宇宙生物研究所(略称:B.S.L.)」は銀河連邦からの依頼を受け、この惑星における現在の生態系を把握すべく調査隊を派遣した。場所が場所だけに連邦当局は、私に調査隊の警護を依頼した。そして私は、あの惑星SR388へ再び足を踏み入れることとなった。

調査隊のサンプル捕獲は順調に進み調査隊が引き上げようとしたそのとき、私は不意にも今まで見たこともない生命体に襲われてしまった。

私にとりついた生物の正体は「X」という寄生生物だった。次の着陸地点へスターシップで向かう途中、私は神経中枢を侵され、突然意識を失ってしまった。スターシップはそのままアステロイドベルトに突入し、接触、そして爆発した…。

激突寸前に自動脱出装置が作動し、緊急脱出用ポッドが放出された。その脱出ポッドを調査艇が回収し連邦本部に新設された宇宙アカデミー内の医療施設に運びこんだ。しかし、到着までの間に「X」は増殖し、私の身体をパワードスーツごと大きく蝕んでいた…。

「心拍数、血圧ともに極端に低下。クランケは依然意識不明、極めて危険な状態。」

バイオ素材でできているパワードスーツは装着時、私の身体の一部となることが事態を深刻なものにしてしまったようだ。意識の無い私からスーツを脱がせることはできない。したがって「X」に蝕まれてしまったスーツの大部分は身に付けたまま切り取られてゆき、私の姿をしだいに変化させていった。しかし、私の中枢神経の奥深くまで侵食してしまっていた「X」を取り除くすべはなく、私の命は絶望的と見られていた。

ところが、唯一の治療法が見つかった。「X」を、除去できるワクチンが、メトロイド細胞から作り出せるというのだ。あの、ベビーメトロイドの細胞組織の一部が連邦によって保管されていたらしい。

すぐにワクチンが作られ投与された。結果、「X」はみるみる消滅してゆき、私は輝石的に一命を取りとめた。この事実をかみしめながら、今私は思う。

「ベビーは、再び私の命を救ってくれたのだと…」

私の微かな感傷を拒むかのような第一報は、「BIOLOGIC 宇宙生物研究所」からであった。今回、SR388で捕獲したサンプル生物が運び込まれた、この巨大な宇宙ステーションからの緊急報告は、意識を取り戻したばかりの私にとって、あまりにも刺激的な内容だった。

「緊急事態!ステーション内、特別保管庫にて、原因不明の爆発事故発生!」

言い知れぬ不安を抑えきれず、私は「BIOLOGIC 宇宙生物研究所」への派遣を申し出た。ステーションで起きた事故が、これから始まる大事件の序章に過ぎないということを、そのときすでに、私は察知していたのかも知れない。やがて、私を乗せた最新鋭のスターシップのコンピュータが、目的地が間近にあることを平坦な口調で告げた。

まもなく「BIOLOGIC 宇宙生物研究所」に到着する。すみやかに着陸態勢に移れ。

【取扱説明書 P.6~9より】

浮遊生命体「メトロイド」

コスモ歴20X5年、銀河連邦の調査船は惑星SR388で道の生物を発見した。「メトロイド」と命名されたその浮遊生命体は、他の生物に取り付いてエネルギーを吸い尽くす、恐るべき能力を持つことが明らかになった。

腕利きの賞金稼ぎ(バウンティ・ハンター)だったサムス・アランは、銀河連邦から、メトロイドを奪った宇宙海賊の壊滅を依頼された。サムスは機械生命体マザーブレインの統括する要塞惑星ゼーベスに単身で乗り込み、苦闘の末任務を遂行した。その後メトロイドは危険な生物と見なされ、銀河連邦の依頼を受けたサムス・アランの手によってSR388のメトロイドは殲滅された。

最強のメトロイドを倒しそのとき、ただひとつ残った卵がサムスの目の前で孵化し、メトロイドの要請が誕生した。ベビーメトロイドは初めて見たサムスを母親と思い込んだようで、サムスはベビーを宇宙科学アカデミーへ持ち帰った。

このベビーを研究した結果、メトロイドの持つ優れたエネルギー特製は人類にとって有効であり、本来平和的活用を目的として人工的につくり出された生命体ではないかと推測された。

銀河には平和と秩序が戻ってきたかのように思われたが、再びベビーメトロイドは宇宙海賊によって奪われてしまった。サムスは再び要塞惑星ゼーベスへ向かい、宇宙海賊の壊滅とベビーメトロイドの奪還のために戦った。

最後の敵との戦いのときに、苦戦するサムスをベビーが盾となり救った。宇宙海賊の壊滅に成功したが、「メトロイド」はベビーメトロイドを最後に絶滅した。

【取扱説明書 P.4~5より】

「メトロイド」が、かの鳥人文明によって作り出された人工生命体であることは、今や周知の事実である。しかしその目的が、「X」を駆逐するためであったという説はあまり知られていない。

SR388の原子生物「X」は、その凄まじい繁殖力により、惑星の生態系を脅かす程の存在になった時期があったらしい。それを食い止めるために機能したのが「メトロイド」だったようだ。

天敵である「メトロイド」が、サムスの手により絶滅させられてしまったため、SR388では再び「X」が脅威を振るい始めた。そのサムスは「X」に寄生され、危うく命を落としかけた。

そして「メトロイドワクチン」によってその命を救われ、「メトロイド」の DNA を受け継ぐこととなったサムスは、「X」に対抗しうる唯一の存在となったのだ。

鳥人文明について残された文献に、興味深い記録が残されている。「メトロイド」という名前には、鳥人族の言葉で「最強なる戦士」という意味があるらしい。そのメトロイドの遺伝子を継承し、生まれ変わったサムス・アラン。「メトロイド=最強なる戦士」の名はサムスにこそ、ふさわしい称号だと言えよう。

【取扱説明書 P.41より】