プロローグ
アドル=クリスティンは、16才の時から63才にしてこの世をさるまで、エウロペを中心に世界を旅した勇敢な冒険家で、今をさかのぼること千数百年の昔、エレシア大陸の西、エウロペ地方の北東に位置する小さな山村に生まれた。
旅のほとんどが徒歩に頼る時代、その生涯の行動範囲の広さには驚くべきものがある。南方はアフロカ大陸の中央部、東方はオリエッタ地方のティグレス川まで及び、晩年は北極点を目指したとの記録も残されている。
彼を冒険家として世に知らしめた最初の冒険は、17才の時に体験したエステリアの冒険である。当時、エステリア島は嵐の結界により外界を隔絶され、魔物のうごめく危険な場所だった。彼はすべての異常の原因が「黒い真珠」と呼ばれる魔法の宝玉にあると突き止め、果てには、伝説の天空都市にまでおもむいてエステリアを魔軍から解放した。この記念すべき第1の冒険は冊子本としてまとめられ、のちに『イース~失われた古代王国』というタイトルがつけられた。以来、彼の代表的な冒険には、初心を大切にするという想いから、『イース』から数えていくつ目の挑戦であるかが表記されている。『セルセタの樹海』『フェルガナ冒険記』「失われた砂の都ケフィン』「アルタゴの五大竜』などを始めとし、彼の冒険日誌から起こされた書簡は百余冊にも及ぶ。今回、ひもとかれる『失われた砂の都ケフィン』は『イース』から数え、5番目に体験した大きな冒険で、彼が20才の時の冒険をつづったものである。